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GoToトラベル 出向社員に平均日当4万、最高日当7万は決して高くはない【人材のプロが解説】

2020年10月14日 2020年10月23日 36487 ニュース

内部資料入手「GoToトラベル事務局」大手出向社員に日当4万円

https://news.yahoo.co.jp/articles/

といった刺激的な記事がyahooニュース(週刊文春)に掲載されていました。

詳細は本文を見ていただくとして、要約すると出向社員に日当4万円は高すぎるという内容になっていますが、この記事に対しては、長く人材業界にいるものとして苦言を呈したいと思います。

田中

そもそも日給と日当を捉え違えている人がほとんどかと思います。

日給:労働者に労働対価として1日に支払う金額(給料の1日分)
日当:1日あたりに出向元企業に支払う金額
※日当には文脈などにより様々な意味になる事があるが、今回の件は出向元企業に支払う金額を指す

今回の4万円という数字は日当であり、日給ではありません。
出向者の日給(1日の給料)はその半額程度です。

※10月19日の野党ヒアリングでの観光庁回答

マスコミも理解はしていると思うのですが、少し悪意を感じますね。

kiji

日当一覧

記事に書かれている日当と出向元旅行会社での役職を一覧表示してみましょう。
※実際に事務局が公表した支払いデータです。

旅行会社の役職 日当 人数
事務局長・事務所長 6万9800円 59名
部長級 5万5300円 213名
課長級 4万8700円 2315名
係長級 4万0600円 2522名
係員級 3万2700円 1251名
派遣社員・契約社員 2万7900円 572名
システムプロジェクトマネージャー 6万9800円 5名

日当単価の構成
1.基本給相当額
2.諸手当(役職、資格、通勤、住宅、家族、その他)
3.賞与相当額
4.事業主負担金(退職金積立、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険、児童手当)

田中

数字だけを見ると、
末端の派遣社員でも月20日換算で月収約50万円!
と驚いてしまいそうですが、実際にはそんな事はありません。

日当単価の構成をみれば、基本給以外の事業主負担金まで含めて支払っているのがわかるはずです。

日当4万円がすべて給料になるわけではない

まず大前提として、日当は出向社員への日当として各社に支払われる金額と記載されており、これらは出向元の旅行会社に支払われる数字で、全てが本人に給料として支払われるわけではありません。

ここから会社に幾分かのマージンが取られた数字が働いた本人の給料になります。

 

出向社員の給料だけを支払えばいいじゃないか!

という意見もあるかと思いますが、一人の社員を雇用・維持するために、採用費・福利厚生費など給料以外の費用を出向元企業は支払い続けています。

国が出向社員の給料だけを負担した場合、出向元企業の負債だけが膨らむ事になり、そのような状況で社員を出向させる事はあり得ません。

出向してもらう場合には、給料以外の費用も受け入れ側(国)が負担する必要があり、実際に国は支払っています。
※上記、日当一覧を参照

人材派遣で日当4万円は普通

人材業界の常識として、どのような業種でも特定の専門知識を持った人材を受け入れようとすれば、最低でも日当にして3万円程度は必要です。

今回の大手出向社員への日当4万円も人材派遣の常識からすればあたりまえの数字であり、決して極度に高すぎるという事はありません。

試算

みなさんの給料が仮に額面月30万円、年収360万円だとします。
そうすると、あなた一人に対して会社に入る売上はその何倍もあるはずです。

「あなたが仮に他社に出向するとなると、あなたの会社にはいくらの日当が必要になりますか?」

月20日出勤、あなたへの給料だけで1日の日当が1万5000円。

一般に雇用従業員に支給する給料の1.5倍程度の収入(利益)があれば「会社の収支がプラスマイナスゼロ」といわれており、最低でも1万5000円x1.5倍=日当2万2500円が必要。
※出向元企業では社会保険費用など給料以外の費用を支払っているため。

会社の利益が0円、つまりタダで大事な社員を貸し出す企業が存在するはずもなく、当然ながら日当2万2500円より増額して出向元企業の利益も保証してはじめて、要請に応えてもらえるはずです。

もっと言えば、人材派遣の報酬単価1.5倍請求は良心的な方で、報酬単価の倍額程度を請求することも決して珍しい話ではありません。

出向されてきた正社員が平均年収360万円ということは考えにくいため、仮に平均年収500万円クラスの人たちが派遣されてきたと考えると、今回の平均日当4万円も不可思議な数字ではないと容易に理解できるかと思います。

プログラマ・SEの派遣で考えてみる

専門職派遣の例として、日常的に派遣される事の多いプログラマ・SEの派遣料金で比較するとわかりやすいと思います。

プログラマやSEは派遣される際に、1人月○万円と言う形式で派遣先と交渉を行います。
※一人月(にんげつ)とは、1人が1か月で行うことのできる作業量(工数)を表す単位。

職種 1月あたりの料金
プログラマ(東京) 60万円~
システムエンジニア(東京) 80万円~

※アイミツ https://imitsu.jp/より引用
東京か地方か、大手か零細か、また技術水準によっても異なりますが、東京であれば最低でも上記程度の金額が派遣元に支払われます。

仮にシステムエンジニアを一人受け入れれば、1月あたり80万円を支払うことになり、20日勤務計算で日当にすれば4万円になります。

この場合のシステムエンジニアの想定年収は500万円程度で、それほど高くない年収にも関わらず日当は4万円を超えてきます。
※1人月のうち3割から5割程度は会社の取り分。状況にもよる。

更に今回は国が旅行会社にお願いする形で出向してもらっていることを考えると、、今回の平均日当は本当に高すぎると言えるのでしょうか?

田中

専門職を出向させているわけですから、平均的かつ妥当な数字だと思います。

10月19日の野党ヒアリングで国会議員の方が質問をされていましたが、、

「一般の感覚からすると、ちょっと高すぎるんではないかなと」
(立憲民主党 山井和則衆院議員)

「半額近くが実際の基本給に当たる部分なのではないかと考えておりますので」
(観光庁担当者)

とのことですが、観光庁の担当者も「普通なんですけど、、」と驚いたのではないでしょうか。

ひとつ気になることがあるとすれば

問題なのは、会社での本来の仕事が忙しく、事務局での仕事はほぼしていないにもかかわらず、会社が高額の日当を受け取っているケースも珍しくないということです

全く働いていないにも関わらず日当が支払われているのであれば、問題といえます。
これが本当ならば、非難されても仕方がないのかもしれません。

ただ、本文内で

(仕事をしない出向社員がいることは)そのような事実は承知していません。

と事務局が回答しているとのことで、真実は不明です。

まとめ

派遣・人材業を経験したことがある人なら、今回の記事について「どうして問題になるんだろう」と違和感を感じた人も多いかもしれません。

日当については若干高くは感じるものの非常事態時の緊急出向という点を加味すれば、妥当な水準だと言えます。

「日当4万円」に怒り心頭な人が多く驚きましたが、マスコミ・雑誌特有の「刺激的な数字見出し」に惑わされないように業界の真実を理解しておいてほしいと思います。

この記事を書いた人
田中大河

20年以上を人材畑一筋に歩んできた人材のスペシャリスト。
就職・転職に関する知識が豊富。